文字で再現してもしかたがないし、記憶も不確かなので、あっさり記す。
たとえば、Hクンとバイトに行っても、すぐクビになるという話で──
皿洗いのバイトのとき、なにしてんのかなって見たら、Hクンが皿を高く高く積み上げている。崩れて、ガシャンと皿が割れたら、皿に向かって、
「この、根性なしがっ」
同窓会のときに、Hクンが頭の上にヘンなカツラみたいなものをつけてきた話──
それを見てたら、Hクンが、
「これかっ?」
と自分で指さし、
「これ、カツラや」
と言う(自分でゆーたら、カツラの意味ないないやろ)。
「ハゲとったら失礼かなと思って、ヨメはんの借りてきてん」
ホラ話の傑作と言っていいのが、バイクで事故ったHクンが消えていなくなってしまった話──
なんぼさがしてもおらんから、しかたなく帰って、Hクンの家へ行ってみたら、本人が出てきた。
「おまえ、なにしてんねん? メッチャさがしてんぞ」
と訊くと、
「気がついたら、商店街におってん」
と言う。
「トレーナー2枚買うて帰ってきた。安かったから」
〈トレーナー2枚〉というのが最高だ。安かったという理由までついている。このように、紳助のホラ話は細部にこだわる。そんなわけはないのだが、ひょっとしてホンマにあったことなんちゃうかなと思わせるくらい芸がこまかい。
2006年4月、紳竜いちどきりの復活として新作漫才が予定されていた目前、松本竜介が死去。用意されていた白いツナギが着られることはなかった。
【関連記事】
島田紳助を漫才界に踏み込ませたのは
紳竜の戦略
紳竜の漫才における批評性
紳竜漫才の特徴とブームへの批判
紳竜漫才のセンス
紳助・竜介の解散
紳助が司会者で成功
DVD化の要望が多かった深夜番組『松本紳助』