紳竜漫才のセンス

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 ホントに紳竜に熱狂していたのは、単語が〈わかる〉じゃなくて、センスが〈わかる〉と共感していた者たちだ。紳竜にも、B&Bの〈気のせいや〉に匹敵するネタがある。

「飛行機はなぜ空を飛ぶのか」

 これを知ってるか、と紳助が竜介に問うた上で、説明する。その絶妙の話芸は文字に起こしたところで伝わらない。テイストをわかってもらうため、乱暴だが、オチだけ記す。

「飛ばなしゃあない」

 物理学的な説明をおもしろおかしくする、というような次元の発想ではないのだ。飛行機の気持ちになって考えてみるのである。

 この紳竜史上最高におもしろいネタは理解できる人間が少なかったのか(少ないだろうと判断したのか)、じっさいのネタでは、飛行機のまえにロケットがなぜ飛ぶのかというくだりがある。正直、こっちはあまりおもしろくない。

 が、これがあることで、飛行機ネタについてこれる感性をもたない人間も、さっきとおなじパターンだということで笑う。飛行機ネタが好きな者には残念な保険だ。いきなり「飛ばなしゃあない」がきて欲しい。

 子供でも、たてつづけに漫才を見て、通人きどりになると、B&Bと紳竜を比較して、自分は紳竜の方が好きだな、ぐらいのことは考えられるようになる。漫才ブームはそうした人材を育てた。
 
 
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