『もとの黙阿弥』出演中の貫地谷しほりを松竹座で見てきた

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 井上ひさし作の『もとの黙阿弥』に片岡愛之助が主演し、相手役に貫地谷しほりを迎えた。

  8月1日(土)~25日(火):新橋演舞場
  9月1日(火)~25日(金):大阪松竹座

 という日程である。客層は若い女性もチラホラいるが、愛之助目当てのお年を召したお姉さま方が中心である。あとは、子供も独立したし、と1泊旅行とかに行きまくってそうな夫婦。

 うしろのお姉さま方は歌舞伎のチラシでも手にしているのだろう。開演まえに、こんどのこれにはだれとだれが出るなんて話をずーっとしている。
「ええ値段とるねぇー」
 というような批評は大阪ならでは、か?
「8千円やったら、夜昼行くけどな、2万5千円やったら……」
 なんて、生活レベルは高めなようで。こういう熱心なファンにささえているのだね。

 この芝居は歌舞伎じゃない。明治が舞台のコメディで、ミュージカル的な処理が多い。見るのは、はじめてだったが、予想とちがった。作者が作者だけに安定感はバツグンで、
「脚本がいいねー、いいというか」
「おもしろいな」
 と、お弁当休憩でシロウト夫婦が評してるぐらいだ(ちなみに、夫婦はその後、あのセリフの聞き取りにくかった役者はだれかとパンフレットで特定することに熱中してた)。

 「人物の入れ替わり」「とりちがえ」といった喜劇の王道をもっと徹底的に押す台本なのかと思ったら、そういう意味での見せ場は2幕の1ヵ所だけ。3幕芝居で幕間をぬいても3時間近くあるのに、メインの片岡愛之助&貫地谷しほりの出番は思いのほか少ない。1幕のおわりに出てきて、3幕もメインは劇中劇でのだんまりの立ち回り。愛之助はシロウト役者として昔の芝居の型を演じる。子供っぽく木偶人形的な動きという解釈だった。

 貫地谷しほりは、金持ちの令嬢が一瞬にして山出しの女中に変身するあたりさすがすぎた。表情が完全に山出しの女中だもの。そのあとの女中の仕事になれてない動きは、解釈に忠実すぎ笑えない演出になっていた。

 全般的に作家の芝居で、だれがやってもある程度おもしろい作り、かつ、一座的で小さな役でもやりがいがあるようになっている。貫地谷しほりの使い方は、ちょっともったいなかったかもしれない。
 
 
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