フジテレビ日曜夜9時の枠ではじまったドラマ『家族のうた』──
配役は、オダギリジョー主演で、貫地谷しほりも出ているというテレ朝ナイトドラマの男女のエースを迎えた形。
脚本は、TBS『パパは年中苦労する』の基本設定をイタダキ(関係者は「いいや、フジテレビの『役者魂!』のパクリだと言い張るかもしれんが)。
主題歌は、日テレ『家政婦のミタ』で脚光を浴びた斉藤和義。
このプロデューサーの恥じない精神をホメる気になれないのは、いちばん見たい2人のからみがつまんなかったから。連ドラ初回でとやかく言うのは、2人に申し訳ないが、笑える脚本になっていない。
コメディエンヌの本領はリアクションにあるわけで、第1話からあえて拾うと、子供に恋人なのと訊かれた貫地谷しほりが、
「ない、ない」
という〈間〉ね。ようするに、オダギリジョーの常識やぶりにふりまわされる貫地谷しほりを見たいわけだ。
せめて、演出をケラリーノ・サンドロビッチにしてもらえぬものか。
オダギリジョー単体では、さすがで、落ちぶれたロック・ミュージシャンの過去に人気があったという甘ったれぶりをうまく出している。
「ダイナマイトなクズ」
という反論にはちょっと笑った。
まえまえから、岡村靖幸役をだれかにやらせるとしたら、オダギリジョーしかいないと思っていたが、確信を強めた(もちろん、相棒役は金山一彦本人で)。といったって、岡村靖幸をドラマや映画で使おうというロデューサーはいないだろうけど。
落ちぶれたミュージシャンという素材は悪くないのに、〈生活的に追いつめられる〉という展開になってしまうと、まったく同情できない。自分の作詞作曲でミリオンヒットを飛ばした過去のある人間だと。
そこへもってきて、自分を「お父さん」と呼ぶ子供がたずねてくるという。『年中苦労する』のときは、ミカリンがハーポばりにハサミでなんでも切り刻んだりするのが楽しかった。今回の女児は幼い弟に向かって、
「守ってあげられなくてゴメンね」
とか言って泣くのだ。カンベンしてくれ。
あれか。その昔、ヤクザ映画が義理と人情で泣きまくってたのを、近頃のドラマは家族愛に変えただけか。我が国のシナリオライターは、家族をからめんと話が作れんのか。
連ドラは途中で修正がきくのだから、もっと乾いたコメディを見せて欲しい。貫地谷しほりみたいに器用な役者を便利屋的に使うTV界の不器用さは改善してもらいたいな。
ダイナマイトなクズだったオダギリジョーが子供との交流によって立派な大人になるといったような絶望的な展開だったら、おれは泣くぞ。
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