『家族のうた』最終回

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 問題点 → 基本設定が『パパはニュースキャスター』の詳細のパクリ(事前に元ネタの脚本家から指適があったらしい)という点はさておき、ドラマの根底であるカットウの作り方がおかしい。

「落ちぶれたロック・ミュージシャンがロックっぽく生きようとするほど、世間とぶつかり、仕事をなくしていく」

そこに子供をからめるなら、子供はロックの足をひっぱるのが役割だ。

「しかし、主人公のロックな生き方が結果として周囲をハッピーにしていく」

というのがオーツドックスな展開だろう。

このドラマは一見そのように見える。対人関係などの消極的なトラブルを抱えた子供たちが主人公の言葉に励まされ、自分のカラをやぶっていく。けれど、ドラマの目指しているところはどうも、「子供たちとふれあうことによって、主人公が大人になる」ということのようなのだ。主人公が変わってしまったら、変わるまえに変えられた子供たちはどうなるのか。ツジツマが合わない。

 作品のテーマというのは、非常に単純化して言えば、「だれがどう変わるか」によって示される。「ロック男が子供たちに感化されて大人になる」というストーリーなら、「ロックは悪」がテーマである。「ロック男が信念をつらぬくことで、まわりが幸せになる」なら、「ロックは善」である。

 そこがあいまいだから、視聴者の心をつかむことができず、ガキとジジイを使って、泣かすことすらできない。ましてや笑わせるなんて! 大人の役者は演技する余地がない。

 シナリオが特定の作品の影響を受けてるのが問題なのではなく、どこかで見たようなドラマ風の場面をつなぎ合わせるだけで、ハナシが成立してないとこがダメなのだ。

 田村正和のドラマが成功したのは、二枚目俳優がセルフ・パロディ的な役柄を演じたからで、ストーリーは「二枚目は悪」でまとまってる(続編の『年中苦労する』を例にとれば、田村正和の主人公は酔うと子供の写真を見せて、「ミカリンがねぇ、かわいいの」とか言う)。それに、バブル期のエクセントリック女優・浅野温子がからみ、ああいうサバサバ感に憧れる層にも支持が広がったのだ。

 ドラマの企画が安易だからイカンということにはならないかもしれないが、「あれ、おもしろかったねえ」なんてノリでパクなのなら、せめてなぜおもしろかったかの分析ぐらいしてくれ。あるいは、話がつまんなくても、毎回5分でいいから、見せ場なり、遊びなりを見せてくれ。

 視聴率低迷により8話で打ち切りなんて、まさにオダギリ演じる早川正義がおかれた状況そのものじゃないか。それに対し、番組スタッフはどう立ち向かうか。

 と思ったら、最終回は、エンドロールの合間に流せばいいような、それぞれの問題にケリをつけるシーンの羅列で、ドラマとしてのクライマックスもなにもない。

 とりあえず、話をまとめるためのはミエミエだが、なぜ話をまとめる必要があるんだ? 打ち切られるんだろ? ハチャメチャにやれよ。それがロックだろ! そうすれば、史上最低の視聴率が伝説になったのに。最後にDVD-BOXの宣伝なんてしてるんじゃねえっ。DVD買いたくなるような最終回を開拓してからやれ、そういうことは。

 ちょうど、この時期、政権交代のときに掲げたマニフェストをなにひとつ実行できず、震災復興もまったく手つかずといっていい民主党ドジョウ政権が唯一決定しようとしてたことが原発再稼動と東電社員昇給のための電気料金値上げ承認という時期だった。首相が「政治生命を賭けて」やろうとしてるのが増税だ(復興支援ではなく!)という時期だった。

 たとえば、最終回で、長女格が母親と去ったバスは長距離で運転手過労のため、事故で真っ二つになり、ジジイは息子にあやまりに行って殺され、食いつめた主人公がやけになって国会に乗り込んで斉藤和義の反原発ソングを歌い、逮捕されるのがクライマックス。最後に、姉も理不尽な事件で失ったチビが生きる術もなく、それでも、拳を突き上げて、
「ロックンロール!」
 と叫ぶなら、少しは話題になったかもしれない。

 じっさいの最終回は、「大人になった」主人公がいわば天使となって、子供やジジイのまわりをヒラヒラと舞い、そうすると、あっという間に問題が解決するんである。それなら、せめて、最終回だけ独立した形で、オダギリジョーがケイリー・グラントに負けない天使ぶりを見せるとかなら、価値もあったろうに。てか、打ち切りでも、あと1ヵ月、おなじキャスト(ただし、子供とジジイはぬき)でべつの話をやればいいのに。貫地谷しほりもいるんだから!
 
 
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