B&Bの漫才はこんな感じだ。
洋七が洋八になぞなぞを出す。
「リンゴとミカン、どっちがバナナ?」
「え、えー……」
「アホか、おまえ」
と頭をはたく。
これのどこが新しかったか、わかるだろうか? 出だしのなぞなぞは、子供にもわかるナンセンスだ。フツーの漫才師なら、これで満足してしまう。
平凡な展開だと、「なんやねん、それ」とツッコんでおわりだ。B&Bの本領はそのあと。洋八は〈考えあぐねる〉までもいかず、一瞬うろたえる。一瞬である。直後には、
「アホか、おまえ」
といって、頭をひっぱたかれているのだから。常識的には、ワケのわからない問題を出した洋七の方が「アホ」だろう。わからん方が「アホ」と責められるわけだから、ナンセンスは二重になる。
しかも、洋七の口ぶりは「おまえ、こんなこともわからんのか」というものだから、つづき(つまり、答え)があると思うだろ?
ない。洋七はさっさと次に行く。洋八がなにか言い返そうとでもしようものなら、
「もみじまんじゅう!」
と叫ぶか、もしくは、洋八のもじゃもじゃの髪の毛を両手でつかんでゆすりながら、
「小野田さーん」
と大声で呼びかける。
知らない人間が聞いても、わけがわからないだけ。字で見て、かろうじて、おもしろさがわかるのは、出だしのなぞなぞの部分ぐらい。とにかく、洋七は少しでも間があくことを恐れるかのように、のべつまくなしにまくし立てる。B&Bの漫才を「マシンガントーク」のような言葉で説明した気になっているやつをときどき見かける。あるいは、早口な漫才師が出てくると引き合いに出されることがあるが、一面的な見方でしかない。
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