『となりのシムラ』の制作陣は少年の心をもっているにちがいない

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 志村けんがNHKでコント番組をやったということが話題になっているらしく、第2弾というのを見てみた。

 じっさいは65才の志村けんはそれより若い印象があるので、コントの主人公は初老といったところか。その年代の日常を題材にしている。

 なんらかの意欲をもっていることは伝わってくるが、1本目のコントがはじまると、おや、と思った。

 ピエール瀧が店主の床屋に常連客の志村がやってくる。若い女性が見習いとして入っている。その見習いはタオルで思い切り志村の首をしめるドジだ。相手が若い女性だから、志村は文句を言わず、ニコニコしている。

 頭を洗う段になって、志村を抱きかかえるようにするので、胸があたる。うれしそうな志村の表情。だが、頭を洗っていたのは、ピエール瀧だった。

 おなじパターンをもういちど、くり返す。

 これ、いつもの志村けんとどこがちがうんだ?

 ま、でも、1本目というのは、ゴキゲンうかがいみたいなものだから、と念のために2本目を見てみた。

 年輩の夫婦が家を買い換えようとしていて、不動産屋に案内される。営業マンは予算を1ケタまちがえていた。その予算なら、中古だけど、いいマンションがあると案内されたのは、自分たちの住んでいるマンションだった。

 もちろん、天下のNHKが全国から受信料を徴収して作っている番組なのだから、まさかツマラナイものを放送するなんてことはありえない。おそらく、作り手たちにとって、このコントなど驚愕絶品のオチなのだろう。

 さすがに、あとは早送りにしたが、3本目──

 昼食は長年、妻の手作り弁当だったサラリーマンの男。妻が旅行に出たので、部下を誘って人気の見せに食べに行く。ひとりだけちがう注文にする時点で、男のやつだけ出てこないんだろうことは想像がつくが、ていねいに、店員が男の注文だけちゃんと聞いていないという演出がある。案の条、部下たちが食べおわっても、男の注文は出てこない。

 このあと、どうなったと思う? これでおわりなのだ。

 改めて注文し、混んでいるので、部下は先に帰り、出てきた品はまちがっている。

 最後のコントなんて、音楽の夢を追いかける娘を応援してくれていたのは、いつも反対していた父親だったという、ただのいい話だったぞ。たぶん、5万回くらい見せられたパターンの。

 ふと、浮かんだ言葉が「小学生レベル」だった。きっと、番組を制作した人たちは大人なんだろうが、子供のころ、志村けんを見て育ち、志村けんが出ているものはおもしろいと思っているのにちがいない。

 共演者に、ピエール瀧や池谷のぶえを使えば、センスのあるってとこを見せられるぜ、というサブカル信仰ももっているはずだ。

 おれが見つけたこの番組のいいところは、
「登場人物が死んだから、泣いてくださいというドラマを見せられるよりはマシ」
 という点だ(ただし、時間をムダにしてもいい人にかぎる)。

 おそらく、なんらかの事情で、制作にたずさわった人たちのあいだで、伝達がうまくできてなかったんだろうから、おせっかいを焼いておく。

「コントというのは、笑える短い話のこと」

 だ。だれが出ているかではなくて、中身が問題なんである。ヘタな演者だと、中身をだいなしにすることもあるが、まずは内容のおもしろさだ。クリエイティヴにおいては、新しさをつけ加えることも必要である。

 それとも、おれの見てない前回はまったくちがった感じだったのだろうか?

 いずれにせよ、この番組をホメた人間は、この先もずっと、
「私は『となりのシムラ』をホメた者です」
 というのをキャッチフレーズにして、すべての文章、発言のまえにこのキャッチフレーズを加えて欲しい。そうすれば、他人に迷惑をかけずにすむ。いっさい口をつぐむ、というのも、いい考えだ。
 
 
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