KinKi Kids「硝子の少年」は松本隆にとっても最大のヒット曲

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 爆発的に売れたKinKi Kidsのデビュー・シングルである「硝子の少年」。じつは、昔からTVでおなじみのアイドル作品は、そんなに売れてない。発売週に1位を獲得したところで、あとは固定ファンのマーケットだから。その意味で、近藤マッチは別格だった。だから、ジャニーズは彼を重役待遇にして、レースだのなんだの、好きなことをやらせたわけだ。KinKi Kidsはそれをかすませるほどの快進撃をここからスタートした。

 マッチさんのときとおなじ作家チームが起用された。80年代のヒットメーカーだった松本隆は90年代に入って、ほとんど声がかからなくなっていたが、結果として、このシングルが自身最大のセールスを記録した。

 山下達郎の曲は発表当時、さんざん古いと言われた。ポップ・ミュージックは売れたもん勝ちである。もともと、メイン・ターゲットの母親世代を視野に入れていた。若いファンだって、新しいもの好きばかりじゃない。

 それより、気になるのは詞の古さだ。

 ♪くちびるがはれるほど囁きあった

 という部分はいまいち意味不明だが、おそらくそのまえの〈キスを夢中でしたね〉を受けているのだろう。古い歌謡曲のカップルはそんなにいっぱいキスをしないという意味では時代に合わせたのかもしれないが、それをしたのが〈映画館の椅子〉というのは、どうなんだろ。それ以前に、ストーリーが『金色夜叉』(明治時代の小説)だし。

 キーワードの硝子(いつもなら、ひらがなで「がらす」なのにね)は、KinKi Kidsを見たときの松本隆の印象らしいが、それとの関連で出てくる〈ビー玉〉ってのが……。知らないことはないだろうけど、このとき、18才だったKinKi の2人はビックリマンチョコとかで遊んだ世代だと思うぞ。

 それでも売れたってことは、アイドル・パワーをべつにすれば、一種のなつメロとして聴かれたってことだ。
 
 
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 山下達郎によるセルフ・カヴァーが聴ける
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●KinKi Kids「硝子の少年」
 作詞:松本隆/作曲:山下達郎
 (168万枚/年間2位)
 
 
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