1970年12月発売のヒット曲と話題

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鶴田浩二「傷だらけの人生」

 作詞:藤田まさと/作曲:吉田正
 (77万枚/翌年 4位)

 ポイントは歌ではなく、東映任侠映画のスターだった鶴田浩二が言うセリフの部分の比重が高く、「古い奴だとお思いでしょうが」というのは、流行語になった。ギャグ的に使われたせいもあって、かなりあとまで使われた。タイムボカン・シリーズにも「古いギャグだとお思いでしょうが」として出てくる。映画内人物的鶴田浩二がTVに出て、「今の世の中、右も左も真暗闇じゃござんせんか」と言うのはシュール・ギャグともとれる。
 
 

森進一「望郷」

 作詞:橋本淳/作曲:猪俣公章
 (54万枚/翌年 9位)

 「港町ブルース」以来の1位獲得。ところで、森進一といえば胡浜三郎。いまやすっかり忘れられているが、『全日本歌謡選手権』(読売テレビ)で10週勝ち抜き、初代チャンピオンに。デビュー曲「女のまごころ」は40万枚を超えるヒットとなった。渋く甘い声、高い歌唱力があまりにも森進一に似ているため、ついに森進一を越えられず、その後、森進一のそっくりさんとして営業に精を出すことに。芸名・森進伍。味わい深い人生だ。
 
 

奥村チヨ「中途半端はやめて」

 作詞:なかにし礼/作曲:筒美京平

 前作同様、入りはかなり演歌調。よく演歌の人が声をふるわせるが、奥村チヨの場合、波形の凹凸がフツーの人と逆なんじゃないかみたいな。なんか声が揺れてるんである。なぜ、中途半端はやめて欲しいかというと、苦しいだけだから。好きなの嫌いなの、拾うの捨てちゃうの、嘘なの本気なの――どっちかはっきりさせて! 責任とって! と詰め寄るこわい歌。♪最初あなたが惚れさせて 今頃何さ~という気持ちはちょっとわかる。
 
 

ゴールデンハーフ「黄色いサクランボ」

 作詞:星野哲郎/作曲:浜口庫之助

 オリジナルは59年10月。小林旭のコミック・ソングで知られる名コンビのセクシー歌謡をカヴァー。ゴールデンハーフはハーフの女の子ばかり集めたグループっていう歌謡曲的安易さがいい。これがデビュー曲。なんていうんだろ。おなじセクシーでも奥村チヨ風ではなく、もっと西洋風になっている。ジェームス・ボンド風というか。♪わーかい娘が~という歌い出しは、80年代の『オレたちひょうきん族』内コントでギャグ風に使われた。
 
 

ちあきなおみ「別れたあとで」

 作詞:白鳥朝詠/作曲:鈴木淳

 ピアノがポロポロ鳴る非常に洒落たイントロに、まずひきつけられる。歌は当時の歌唱を超えるものでないが、歌詞もけっこうユニークだ。渚ゆう子のベンチャーズ・シリーズ第 2弾「京都慕情」も39万枚、翌年15位のヒット。これを洋楽化傾向と言っていいのかどうかは不安だ。一方で、西田佐知子「女の意地」31万枚、翌年28位。美川憲一「おんなの朝」29万枚、翌年33位。といった相変わらずの路線も売れている。
 
 

おすすめの歌・注目曲

 クレイジーキャッツ「アッと驚く為五郎」
 小林旭「ついて来るかい」
 
 

■音楽Topic 1970.12

 ジョン・レノンがソロアルバム『ジョンの魂』を発表。 4月にポール・マッカートニーがビートルズを脱退して、ソロアルバムを出し、 5月にビートルズとして最後のアルバム『レット・イット・ビー』を発表。11月にはジョージ・ハリスンもシングルをリリースしていた。「Mother」「Working Class Hero」「Power To The People」の他「God」では、〈I don’t believe in Beatles〉と歌った。
 
 
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