○作詞:早川博二
○作曲:早川博二
○編曲:早川博二
1970年2月発売(万枚/年間位)
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左卜全は黒澤明の『生きる』などの名脇役として知られる俳優。1894年生まれの彼はこのとき76才。
アナクロニズムというか、いまだから、楽しめるタイプの歌で、ストレートに聴いて笑えるものではない。だからといって、これが社会風刺ソングだ、みたいな解釈がまかり通ってるのは、どうかと思う。
たとえば、〈ゲバゲバ〉という部分は、全共闘の内ゲバをさしているという──それはそうなんだが、でも、ちがうんである。当時は〈ゲバゲバ〉そのものが流行語だった。
それは69年10月にはじまった『巨泉・前武ゲバゲバ90分』という『ラーフ・イン』にヒントを得たヴァラエティ番組に由来する。この〈ゲバゲバ〉は〈ゲバ〉に由来するが、それを〈ゲバゲバ〉という音にした時点で、本来の意味は消え去っている。
『ゲバゲバ90分』を知らない世代でも、
「あっと驚くタメゴロー」
という流行語は聞いたことのある人もいるだろう。戸川純はこの番組を見て、女優になりたいと思ったそうだ。
話をもどすと、この歌はまずナンセンス・ソングを作るという目的のもとに発想され、語呂のいい〈ゲバゲバ〉が使われ、2番3番では、これまた当時の流行であった交通事故やストライキを入れ込んだと見るべきだ。だから、べつにオートバイやパンストやブルーレットでもよかったが、最初に〈ゲバゲバ〉ときた流れで、〈ジコジコ〉〈ストスト〉にしただけと思う。
風刺でないことは、
♪やめてケレ やめてケレ やめてケーレ
ゲバゲバ
という歌唱で笑いをとろうとしてるのを見てもわかる。
♪おお神様 神様 助けて
はテンプターズからのパッチワークにちがいない。
ボクは作った本人ではないので、推測の域を出ないが、老人と子供を使って世相を風刺しているつもりなら、老人と子供で笑いをとろうとしてるよりさらに低い行為といえる。
もっとも、アタマのインパクトは大で、
「ズビズバー」
をギャグにした。大槻ケンヂあたりがさんざんパクッてる。