○作詞:阿久悠
○作曲:羽根田武邦
○編曲:馬飼野俊一
1970年3月発売(万枚/年間位)
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和田アキ子はいまではヴァラエティ・タレントとして知られている。というより、芸能界の女ボスか。誕生会に呼ばれることが軍門にくだった証みたいな。その人選も工藤静香~柳葉敏郎~島田紳助など、ようするにヤンキーな背景が求められる。
もともと、大阪で名の通ったスケバンだったらしい。そりゃ、あんだけの身長と肩幅じゃ、じっさいケンカも強かったのだろう。芸能界に入ってからも、『野良猫ロック』という映画などで、そのまま女番長役で出たりして、そうしたイメージでずっときた。
ヴァラエティ寄りになって以降も、ビートたけしが「いっしょにゴルフ行ったら、穴からボールを取り出そうとして、グリーンごと持ち上げた」とか、タモリが「手のひらにゴハンのっけて、そのまま、火にかけて、チャーハン作るらしい」といったネタを広めた。
力持ち、暴力的、酒飲むと暴れるという伝説である。
なので、デビュー当初はリズム&ブルースの男歌に近いようなのを歌ってた。それが売れないんで、作詞の阿久悠はプロデューサー的発想で、女っぽく変えた。
その方向転換となったのが、この「笑って許して」だった。
「あんなデカいのに笑って許してって言われたって、そうはいかんとこあるんですけどね……」
その後、翌年にかけて、都倉俊一とのコンビで、「天使になれない」「夜明けの夢」などを作っていく。阿久悠の中では、ひょっとしたら、いちばん女々しいかなというほどの詞だった。
それで、作詞家として欲求不満がたまって作ったのが「あの鐘を鳴らすのはあなた」だった。CMで売れっ子だった森田公一を作曲に迎え、スケールの大きな歌をねらったという。
でも、一般に残っているのは「笑って許して」の方だ。鼻から抜くような歌い方(これだけ聴けば、セクシー歌謡の変種)がよくモノマネされたせいだ。それと、「笑って許して」という言葉のキャッチーさが大きいと思う。