いかにも山下達郎らしいポップ路線。ここで言うポップとは、ファンじゃない人にも広く受け入れられそうなタイプの、という程度の意味。正直、個人的に好きなタイプの山下達郎ではない……とずっと思っていた。のだが、ぼんやり聴いていると、いいのだね。いわゆる〈せつない〉気分がずんずんと胸にくるというか。
その昔、「夏だ海だタツローだ」と言われた時代があった。ところが、本人曰く、自分の作品には、夏を謳歌するようなタイプの歌はほとんどないってことだった。たしかにそうで。でも、さびしさのあるような曲、それはそれで夏って気がボクの中にはあるのね。そういう名曲が山下達郎には数々ある。それは他で語るとして。
「好・き・好・き SWEET KISS!」が響いてくるのは、ボクにとっては他人事の夏だからだ。少し距離をおいたところにある夏。現実に経験したかはべつにして、なつかしい。
じっさい、山下達郎はこの曲を他人に提供するつもりで書いたんだという。自身の作家的な部分がフルに出ていて、詞曲ともに愛着のある一作とも言っている。
渋谷のハチ公まえでデートの待ち合わせをしたことがないような人間にも、それっぽい気分をかきたたせることができるんだよね。まさに職人芸。
シングル「いつか晴れた日に」（作詞：松本隆／作曲：山下達郎）のカップリングとして発表された。長年、山下達郎のFM番組のスポンサーをしてきたJACCS カードのCM曲。
「好・き・好・きSWEET KISS!」 ⇒ 収録アルバムはこちら
●山下達郎「好・き・好・きSWEET KISS!」
作詞／作曲：山下達郎
1998年4月29日発売（最高15位）
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