知らない人には教えてあげよう大阪名物「キヨピー現象」

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 子供のころ、親に教えられたことに、
「音楽聴くのが好きなら、ラジオにはFMってあんねん」
 というのがある。親の言うことを聞く、という点では、人生のトップ3に入るぐらい守ってきた。

 当時、FM局はNHK以外には、各地域1局しかなかった。大阪なら、FM大阪。それが平成とともにFM802がはじまった。よりアメリカナイズされたオシャレなFM局として。いまはあたりまえになった街ぐるみのイベントなんかも次々しかけて。DJの引き抜きもあって、多くのリスナーがFM802に流れた。FM大阪はかつてのAM局に近いイメージになった。

 ところが、FM802の存在があたりまえになったころ、まさかの大逆転が起こったのである。月曜と火曜の午後だけは、FM大阪の聴取率の方が高くなる。当時の番組名は『JAC851』。メイン・パーソナリティは言わずと知れたあの人、「キヨピー」こと谷口キヨコである。

 あのハイ・テンションなトークに耳がもっていかれたままになってしまうリスナーが続出。とくに、90年代半ばのノリはすごかった。SNSのない時代、純粋に口コミで広がり、中毒者が多数出た。さすが大阪、笑いの都。オシャレな音楽より、おもろいしゃべりが勝つんである。

 いつのころからか、日中クルマで大阪市内を走っている人たちのあいだで、ささやかれはじめたのが「キヨピー現象」という言葉だった。信号待ちで、となりのクルマを見ると、向こうの運転手も自分とおなじように大笑いしている。
(あ。あっちもキヨピー聴いてんねんな)

 これが大阪名物「キヨピー現象」だ。

 21世紀に入っても、仕事でクルマに乗る者たちは、ときおり、こうささやきあった。
「おれ、今日、キヨピー現象見たで」
「おれも見た」
 
 
※『JAC851』は2005年4月~『LOVE FLAP』に番組名が変わったが、内容はほぼ踏襲された。放送時間帯は何度か微妙に動き、谷口キヨコの担当曜日も2010年10月~2014年3月は水・木だった。
 
 
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