独特の存在感で、インディーズ時代から注目を浴びてきた町あかり。ひと目ひと聴きでインパクトを残す。妙な曲調で、昭和のアイドル歌謡風が売りになっている。衣装も手作りでそれっぽくしてある。当時のアイドルたちが見れば、「恥ずかしい」と思うような服だ。その在り方は少しCKB を思わせる。氣志團の綾小路翔やヒャダインにエールを送られ、電気グルーヴの前座をつとめるなど、すでに実績十分という感じ。
町あかりがCKB とちがうのは、下積みがそれほどないことで、大学在学中の2010年8月に活動を開始すると、2013年5月にはテレ朝『musicるTV 』に取り上げられ、10月にはアルバム『町あかり全曲集 その1 』が出るという具合。
インタビューを読むかぎりでは、世間が騒ぐ昭和歌謡風な部分に深いこだわりがあるということではなく、サザンオールスターズきっかけで、沢田研二や岩崎宏美を知ったと。
そのいい加減さがサザンっぽいんだけど。自作自演なので、鼻歌で作ったメロディーをカシオトーンとそのプリセットのリズムを使って作っていると。ミュージシャン志望者がお手本にしたらいい制作態度だ。ライヴも自分で作ったトラックを流して歌うチープなスタイルがカッコいい。
初期の代表曲「もぐらたたきのような人」は、おなじ言葉を連呼するサビにしたくて作ったんだと。〈うまいたとえ〉とかになってないところに、逆に凄みを感じる。
プロデューサー的な資質を感じさせ、本来裏方にまわってそうなタイプの女性が自分で歌っているという点では、ユーミンに近いのかもしれない。
タイトルだけながめても「ア、アイシャドウ」「それ分かる!」「さっきも聞いたわその話」「No Problem(お安い御用)」「ちょっとここじゃあ言えません」「コテンパン」など。『全曲集』には「ひょん!」なんてのもある。ユーモラスな方向性がいいね。
(2015年6月発売)
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