太宰治の絶筆で発端部しかない『グッドバイ』をケラリーノ・サンドロビッチが手がけると、どうなるか。とうぜん、欠けている部分はケラが書き、演出する。
最近は、他人の書いたホンで演出する仕事も多いケラ。出だしは、セリフもわりに忠実で、文学風の仕上がり。その後も、終戦直後の時代色を出し、ナイロン100℃でやったような近過去モノのテイストを感じさせるところもある。なんて思っていたら、じょじょにケラ色が炸裂し、自分は玉子だと思っているあたりから客席の笑いが大きくなり(それまでもウケてはいたのだが)、後半はサリヴァンの旅がちょこっと入って、大団円。
途中の展開もだけど、この結末のつけ方あたりが、事前にツイッターで「シチュエーション・コメディ」と言ってた部分だろう。自分で評してたように、これまでのケラ風とはちがい、といって太宰風でもなく、あえて言えば、昔風。
もともと、引用の多い作風なので、お手のものなのだろうが、なるほど、発端しかない作品はこういうふうにもっていくのねって舞台だった。大爆笑をとりに行って、見事成功をおさめているところもあったし。終演後にぞろぞろ客の逃れにまぎれていると、
「最近の中でいちばんよかった」
って少し若めの女性の声も聞こえた。
年令層が高めだったのは、出演者の顔ぶれもあるだろうけど、基本はチケットが高いのだな。仲村トオルのバカっぽさは『怪奇恋愛作戦』のときより、よく出ていたと思う。
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