ファンタジー小説(長編)の書き方。『怖いもの知らずのルリジサ』を実例に著者インタビュー形式で実践的に語る。
インタビュアー:RJラボ(──で表記)
答える著者:花見優作(1字下げで表記)
※前回の内容 ⇒ 前口上
──では、これからファンタジー小説や長編小説を書きたいと思っている人向けの話ということでお願いします。
ヨロシク。
完成した作品の枚数について教えてください。
400字詰め換算で360枚。文字数カウントで約12万字。本屋にならんでる長編小説の標準的な厚さのもので、400枚前後と考えればええと思う。最近は長いものも多いけど。
──少しまえに復活した日本ファンタジーノベル大賞大賞(新潮社)の応募規定は300~500枚になっていますね。これは復活まえの第1回から変わっていないと思います。ジャンルはちがいますが、伝統のある江戸川乱歩賞(講談社)は350~550枚です。いわゆるラノベ(ライトノベル)の場合、もっと長くてもいいのもあるようですが。
まあ、そのへんは各自の目標に合わせればいい話で。
──そうですね。これからうかがうお話は新人賞にかぎったものではありませんし。ただ、新人賞に応募しようと思っている人は、枚数オーバーが即落選になるなど規定の厳しいところが多いので、そこは注意が必要です。
最近はいわゆる新人賞に応募する以外にも、ネット方面をはじめ、発表のしかたやデビューの方法はいろいろあるから。そのへんも含めて、自分はどういう小説を書きたいのか、どういう読者に読んでもらいたいのか、というコンセプトの問題やな。
『怖いもの知らずのルリジサ』の場合、電子書籍での出版です。
それは、あんたら編集の方針との兼ね合いやねんけどな。ひさびさに花見優作の小説をリリースしましょう、と。〈RJ Books〉から出しましょう、となって、〈RJ Books〉は電子書籍のレーベルなんで、必然的に電子書籍で出すわな。
──電子書籍のいいところってありますか。
好き勝手な内容で出せるとこやろ。「こういうのは売れません」みたいな頭悪そうなことを言われんですむからな。
──その点は、我々のように気心の知れた出版社と組むメリットと言った方がよくないですか。
おっ。その言い方やと、よその出版社が頭悪いみたいな感じになるで。
──そうは言ってません。
ま、電子書籍なら、個人出版もできるからな。だからって、レベル低いの出されても、こまるけどな。
──念のために言っておきますと、個人出版の場合も、プラットフォームごとのガイドラインがあります。たとえば、Kindle本(KDP)なら、Amazonの基準を満たしていないと、販売はしてもらえないわけです。
第1部と第2部に分かれているのには理由はありますか。
これも、編集および販売の都合やな。電子書籍というのは、現状、長すぎる作品やと、売りにくい読まれにくい傾向があるんで。
──宣伝についても、WebやSNSなどネット経由が主になるので、そこらあたりの相性の問題もありますね。
この作品(『怖いもの知らずのルリジサ』)にかぎって言えば、物語じたいが2部構成に近いから、そのへんは問題ないんちゃうかと自分では思ってるけど。ただ、2部構成を前提に書いた作品ではないから、たんに真ん中で割っただけやけどな。
章立てについて説明してください。
全12章。おれのクセで〈序章〉からはじめるから、10章まであって、最後は〈終章〉になってる。フツーは、序章や終章というのは、本編とガラッと内容がちがうときに使うものやけど。プロローグやエピローグとも言う。
──章題とはべつに、01~36の数字がふられていますね。
各パートをセクション(Sec.)って呼んでるけど。これは400字詰め換算で10枚区切り。
──意味はあるんですか。
ない。
──ないんですか!
まあ、自分が書いてる途中で迷子にならんように。フツーは番号ついてる小説っていうのは、第何章とかのかわりで、内容の切れ目で番号が変わる。
──あと、週刊誌連載だった作品は、その名残でナンバリングされていることがありますね。
うん。1回が15枚前後が多いかな。ちなみに、『怖いもの知らずのルリジサ』は15枚ずつでセクションを区切っても違和感ないと思うで。
──それはなにか意味があるんですか。
ない。
(……つづく)