日本にきた外国人に商品を値切られたときの対処法

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 円安というのは、外国人からしたら、日本全体がバーゲンセールになっているようなものだから、どんどん旅行客や買い物客が訪れる。

 何年かまえに1ドル80円くらいだったものが、いまや120円以上だ。これは日本の値打ちが1.5倍になったのじゃなくて、1.5分の1になってるってことだから、ほとんど叩き売り状態。その上、各店が独自で値引きやセールをおこなっている。

 昔、神戸のショップを手伝ったことがあって、店番をしてたら、おそらく留学してきてるのであろう外人の娘と女子大生らしき日本人がいっしょに入ってきた。

 外人の方はなかなかかわいい金髪だ。どうやら、気に入った帽子があったようで、おれを見るから、買うのかと思ったら、値切ってくる。

 アジアの他の国にはそういう文化のところもあるが、我が国のショッピングモールに入っているような店はまけない。おれは店番なので、そういう権限もない。すげなく、ことわったが、相手は引き下がらない。

 英語しかしゃべれん金髪娘は、端数(つまり、消費税)をまけろと言ってくる。それには、こう返してやった。

「それは政府に文句ゆーてもらわな」

 〈セイフ〉がようわからんかったのか、関西弁が聞き取れなかったのか、金髪娘は固まってる。ヨコから女子大生が助け舟を出す。

「It’s a joke.」

 これがおれには、ものすごーく恥ずかしかった。この英文もはたして、的確かどうか疑問が残るが、シンプルであるがゆえに、おれの恥ずかしさは強化される。

 そんな気持ちなどおかまいなく、女子大生は金髪娘の耳もと、英語で解説している。もちろん、金髪娘が笑うはずもなく。

 だいたい、これはジョークではないのだ。ユーモアを含んではいるけど、笑わそうとはしていない。むしろ、イラッとした気持ちをおさえるための返し言葉である。

 ともかく、解説を聞きおわった金髪娘は、もはや値切る気が失せたらしく、おとなしく定価で買って帰った。

 こうして、おれは商売人としての任務をはたしたのだ。気恥ずかしさを代償として。

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