映画『白ゆき姫殺人事件』のポスターで主要人物の 1人のように載っていた貫地谷しほりは、『ゴールデンスランバー』のときのように重要な役だけど、 2シーンほどしか出ない。役柄の雰囲気は評価の高かった『パレード』の感じに近い。あのときも数人の主要人物の 1人的な立ち位置だった。『白ゆき姫殺人事件』は主人公・井上真央(ex花より男子)の子供時代の親友、赤毛のアンごっこのダイアナだ。
といっても、子役は別人が演じるので、大人になって、ひきこもりのゲーマーになった姿を部屋着姿の貫地谷しほりが「おれ」という一人称で演じる。コミュニケーション不全気味のキャラクターだ。
作品の方は、語り手が変わるごとに語られる事件の表情が変化していく。『殺人四重奏』などで使われたミステリの手法が使われている。じっさいはシンプルな事件の構図をTV局やツイッターといった現代的な道具立てて見せる。作中のセリフにもあるように、ウソの供述を映像化するのはアンフェアなのだが、この映画じたいがそのルールにひっかかる要素をもっている。個人的には、ツイッター画面を映画内で見せられるのがしんどいので、本で読む方がいいミステリと思う。
映像化に利点があるとすれば、「菜々緒演じる被害者のような女をナイフでメッタ刺しにして、火をつけてやりたい」という願望をもっている人間の夢を絵で見せてくれる点だろう。井上真央の濡れ場は『八日目の蝉』同様、濡れ場とは呼べない程度のものなのであった。
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