ピンク・レディー「サウスポー」
作詞:阿久悠/作曲:都倉俊一
(140万枚/年間2位)
歌い出しの♪背番号1のすごい奴が相手~というのは、王貞治のこと。トレードマークの一本足打法はフランミンゴ打法とも言われた。歌中は「スーパースター」としか言われてないが、当時はだれでも王貞治のこととわかっていた。ストーリー性のある歌詞で、主人公はサウスポーの女性投手というフィクションなのだが、そこに王貞治が出てくるマンガチックな内容。左利きをなぜ「サウスポー」と言うかは野球雑学として有名だね。
サーカス「Mr. サマータイム」
作詞:DELANOE PIERRE/作曲:FUGAIN MICHEL PAUL/訳詞:竜真知子
浮気して、本命の男を失った女の歌。
「かけがえの ない愛に/包まれていながら 気づかずにいたのね」
と言っているから、失ってから、気づいたわけで、本命男とつきあってるあいだは、満足してたわけではないのだね。
だから、この主人公は、たぶん、次の男が見つかれば、こんな後悔忘れるだろうし、似たような状況では似たようなあやまちを犯すだろう。善悪の問題ではなく、これはもう性質なのだ。
♪待ち伏せた 誘惑に
誘われて 思わず あなたを忘れたの
原詞がそうなのかどうなのかは知らないが、うまいなと思うのは、
♪ミスター・サマータイム
さがさないで あの頃の私を
と歌ってるあたりで、私をさがさないで、ではないのだね。
ヒットした要因は全体にただようムードだと思う。大人の歌謡曲の味わい。
正直に言って、曲詞ともに無難な感じで、耳に斬新なところはないが、ゆえにヒットしたって感じ。
黒沢年男の同年のヒット曲「時には娼婦のように」(作詞:なかにし礼)はこの裏返しというか、〈自分で乳房をつかみ/私に与えておくれ〉というわけわからん過剰な詞で有名だが、曲調はヨーロピアンというのか、南米風というのか、演歌/歌謡曲とは一線を画すモダンな感じ(って、べつにたいしたことではないんだが)。
中原理恵「東京ららばい」
作詞:松本隆/作曲:筒美京平
(34万枚、年間38位)
「名前は?」「そう仇名ならあるわ」「別れた?」「もう慣れっこみたいよ」というセリフ調から♪ねんねんころり寝ころんで~と特徴のあるフレーズに流れ込む。Aメロは松本節だが、ヒロイン像は70年代映画っぽい。ところが、80年代に入って、『欽ドン! 良い子悪い子普通の子』に登場、「良い妻、悪い妻、普通の妻」の人となった。北海道出身で、本名は「目加田」という珍名さん。
研ナオコ「カモメはカモメ」
作詞/作曲:中島みゆき
(33万枚/年間39位)
人生幸朗のボヤキ漫才に取り上げられた。
「カモメはカモメ……あたりまえや!」
石野真子「狼なんか怖くない」
作詞:阿久悠/作曲:吉田拓郎
(最高17位)
『スター誕生! 』出身、石野真子のデビュー曲。編曲:鈴木茂だね。「狼なんか怖くない」というタイトルがアイドルもののとしてはいいけど。次の「わたしの首領」は『唐獅子映画産業』に出てくる。
北島三郎「与作」
作詞/作曲:七澤公典
(翌年75位)
演歌界のゴッドファーザー・北島三郎が♪ヘイヘイホーとTVで歌いまくっていたが、大ヒット曲の印象とはちがって、オリコン・チャートでは、最高25位止まり。おじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川へ洗濯に的日本の原風景を歌っている。ウケたのは、ヘイヘイホーの部分で、「夢想花」の♪とんでとんで~といっしょ。内容はマジメなのに、広まり方はコミック・ソングに近い。
■音楽Topic 1978.03
いわゆる〈ニューミュージック〉を歌謡曲における洋楽コンプレックスとすれば、ゴダイゴが認知された78年は象徴的な年で、年間ランキングでベスト50になんと洋楽が4曲もチャート・インしてる。
24位「ストレンジャー」ビリー・ジョエル(78・5)
32位「悲しき願い」サンタ・エスメラルダ(78・2)
33位「恋のナイト・フィーヴァー」ザ・ビージーズ(78・6)
37位「ハロー、ミスター・モンキー」アラベスク(78・4)
そして、カバーで「Mr.サマータイム」……日本人は〈ミスター〉が好きなのか? 長嶋茂雄は監督で、まだ〈ミスター〉とは呼ばれてなかった。
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