ちょい役なのに貫地谷しほりのコメディ演技が本気すぎる

Pocket

 2時間サスペンスであるところの新・棟居刑事シリーズ(土曜ワイド劇場)に第4作から神林一子役でレギュラー出演している貫地谷しほり。このほど、第9作の『棟居刑事の偽完全犯罪』(原作・森村誠一)が放送された。主演は東山紀之(少年隊──という注釈もいまさらだが、まだ活動してるんだよね)。貫地谷しほりはおなじ警視庁捜査一課警部補(きたろう)の娘という役どころ。

 2時間サスペンスの中には、シロウトが捜査にやたら顔を突っ込むタイプもあるが、このシリーズはちがう。ただ、貫地谷しほりは毎回、たまたま事件の重要な人物とかかわりがある。今回は人気女性作家が事件の中心で、貫地谷しほりはたまたま「いま」その出版社で働いている。ま、ストーリーはどうでもいい。

 原作は知らんが、 2時間サスペンスと化した時点で、とやかく言うのは野暮だ。ドラマで見るかぎり、細部はともかく大ざっぱな事件の真相は途中でだいたいわかる。前回は友人が事件に巻き込まれるストーリーだったので、貫地谷しほりの出番は比較的多かったが、基本はちょい役だ。東が推理を進展させるヒントをあたえる係。

 そのわずかな出番の中で、
「どきなさいよ」
 と突き飛ばされるところがあった。そのときのよろけ方が本気のコメディ演技。重要人物が出版社に乗り込んで、ものすごい剣幕で文句を言うシーンなのだが、その背後でもコメディエンヌのリアクションを見せる。見ているファンはうれしいかぎりだが、完全に浮いていた。

 だって、こういうドラマにおけるそういうシーンって、通常、〈笑い〉というのもおこがましい息抜きとしてしか撮られてないからね。

 ヴァラエティ番組のゲストに出たときも、自分にとってのあたりまえの発言をして、完全に浮いている姿が目立つが、それに通じる。自分に忠実。そういうところが好きだ。