ルパン三世『sweet lost night』~作品のデキは悪夢の予感

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 7月25日に放映された毎年恒例の『ルパン三世』特番「sweet lost night ~魔法のランプは悪夢の予感~」は前代未聞のつまらなさだった。これで、はじめて『ルパン三世』にふれた子供もいるのかと思うと、悲しい。

 脚本は高校生がなにかの賞に応募した落選作みたいだ。表面的な仕掛けだけ突飛で、それを活かすこともなく、物語にもなっていない。近年のTVスペシャルの悪い面を最も強調した形になっている。

 なにより、シリーズものの1編として発表するにあたってのマナーが無視されている。こんな脚本と演出を許可したプロデューサーの責任だ。不二子の全裸なんてやりすぎである。五ェ門に5回も6回も、
「また、つまらぬものを斬ってしまった」
 と言わせるのは、昨今の低級芸人氾濫TVの悪影響で、次元の帽子を安易にとる演出もなにもわかってない。銭形をストーリーに入れ込むこともできず、ナンセンスをご都合主義に利用している。

 栗田貫一の声はどんどん山田康雄から遠ざかっている。もともと、声優(の後継者)は似てればいいってもんじゃなくて、演技力や味がいるしな。

 携帯電話のような最新風俗を取り入れる是非はともかく、作中での扱われ方になんのルールもない。

 ひとつ質問したいのだが、関係者はこれを本気でおもしろいと思っているのだろうか。だったら、どこがおもしろいのか説明して欲しい。

 古いファンにはわからないのさと言うのなら、『ルパン三世』の名を騙るのはやめろ。キャラクターから魅力を引き出せないなら、シリーズ物のキャラクターを使うな。だれかが捨てたバッグに、ブランドロゴをつけて売り出すみたいなマネはやめろ。

 シリーズ物というのは、リスペクトにしてもアンチテーゼにしても過去の業績を前提にして作られなければならない。くらべるのも大人げないが、『カリオストロの城』だって1時間40分の作品だ。TVスペシャルはやや短いにしても、せめてあの半分の質は保ってくれ。

 宮崎駿にも駄作はある。『カリオストロの城』がキライなファンもいる。しかし、今回のTVスペシャルは志が見えない点でまず失格だ。

 その点、おなじ夏休み特番でも、TVの旧シリーズを一挙放映するNHK BSの方が賢い。28日(月)~
 
 
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■初出2008.7.28
 
 
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