もともと、ビートたけしを〈話芸の人〉とみるのも疑問だ。極論すれば、〈話芸に向いてない人〉とさえ言える。
というのは、たけしが自分の実生活にあったおもしろい体験――たとえば、ヨメさんとのエピソード――を語るときの口調。言葉をはしょるようにしゃべる。語尾がもごもごと口ごもるように消える。これは俗に言う〈活舌が悪い〉というのとはちょっとちがう。トークでわざわざ、おもしろいで話をする自分に対するテレがある。バイク事故よりあと、ほとんど聞き取れないことも珍しくない。
俳優としてのたけしが犯罪者役でしか成功していないことも、このことと関連があるように思う。高倉健的な無口な役の方が向いているのだ。無名時代のたけしは洋七の漫才を見て、しゃべりのテンポを上げたそうだが、漫才を聞いても、それほど早口に感じない。むしろ、たどたどしい。
話のうまい人というのは、おもしろい話をおもしろく語れる人のことだ。さらには、おもしろくない話でも、おもしろくする才能の持ち主のことだ。
じゃあ、たけしはなんなのだ、ということになると、〈言葉というものに非常に敏感なセンスをもった人〉という感じか。
たけしは映画監督よりまえに小説家として注目を浴びたこともあった。でも、天性の小説家という感じはしない。となると、彼の言葉のセンスはやはりしゃべるときに発揮されるわけで、ハガキを読むのもうまいし、そういう意味では〈話芸の人〉なんだけどね(なんじゃ、そりゃ)。
P.S.
元芸人とミラーレスのことを書こうと思ってたが時間がなかった。チャンスがあれば、またの機会に。
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