赤川次郎と村上春樹はそれぞれどんな名言を気に入っているか

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 赤川次郎が阿川佐和子と週刊文春で対談していた。ピークだったころは月産700枚、年24冊の本が出ていたという。ほとんど取材せずに。テビュー後2年ぐらいはサラリーマンしながら書いていた。

 話題は小渕政権の「国旗国歌法」以降、社会的発言が増えたことについて。大阪市政に対しても、文楽予算削減などにモノ申してきた。心配なのは教育で、世論を形成するものだから。歴史を学べる環境が減ってきているので、自分で学ぶことが大切と説いていた。

 そんな赤川次郎は、原発事故後、コントロールできなくなっている福島の状況に対する妻の名言を引用していた。

「故障したときはコンセントを抜いたら止まるものじゃなきゃ、つくっちゃダメだよね」

 なのに、コントロールできてないまま、原発を再稼働する社会。

 赤川次郎とならぶ80年代の売れっ子作家だった村上春樹も、発売10日で3刷という話題のエッセイ『職業としての小説家』で反原発の態度を示している。

 内容じたいは、作家志望のためのハウトゥ本というよりも、自分はこう書いているというファン向けのもの。いろんな言葉を引用しているのが興味深い。

 好きキライはべつにして、世間的な支持は現在いちばんある作家と言っていいと思うが、村上春樹本人は自分の作品が過度にけなされると感じているようだ。

 オリジナリティについての章で、オリジナルな表現は同時代の風当たりが強いということをビートルズやビーチボーイズを引き合いに出して、自分をなぐさめている。

 笑ったのは、ポーランドの詩人ズビグニェフ・ヘルベルトの言葉(ロバート・ハリス『アフォリズム』からの引用)。

「源泉にたどり着くには流れに逆らって泳いでいかなければならない。流れに乗って下っていくのはゴミだけだ」

 才能ある作家なんて数年に1人、基準を甘くしても2~3年に1人なのに、年に2回もある芥川賞に対する考えも述べている。

 そして、村上春樹自身が大切に思うのは「意味があると思える作品を書くこと」と「それをわかってくれる読者」の2つ。
 
 
 村上春樹:『職業としての小説家』
 
 赤川次郎:シリーズ第50作『三毛猫ホームズの回り舞台』
 
 ロバート・ハリス:『アフォリズム』
 
 
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