よしだたくろう「結婚しようよ」

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 ○作詞:吉田拓郎
 ○作曲:吉田拓郎

 1972年1月発売(42万枚/年間14位)
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 ♪僕の髪が 肩までのびて
  君と同じに なったら
  約束通り 街の床屋で
  散髪しようよ ンンン……

 とよく替え歌された。♪トンズラしようよ~ヴァージョンもある。男が長髪にすることに挑発的な意義があった時代じゃないと意味のない歌だ。
 しかし、これが収録されたアルバム『人間なんて』(71・12)のタイトル・トラックだけはべつだ。例の〈日本のウッドストック〉と言われる野外イベント〈中津川フォーク・ジャンボリー〉で「人間なんて」を歌って、吉田拓郎はスターダムにのしあがった、というのが定説だ。
 このあと、すぐに「結婚しようよ」をヒットさせ、フォーク界を代表するスターになった。それ以前の岡林信康などは、せまいフォーク業界の話であり、吉田拓郎のように歌謡曲層まで巻き込んだものとはちがった。吉田拓郎の成功が後続の〈やさしさフォーク〉隆盛のきざしを作ったと言える。
 小室等、井上陽水、泉谷しげるらとフォーライフ・レコードを設立するなんてこともやった。日本では最初フォークの方がビジネスとして立ち上がっていく基盤固めをした人でもある。
「(心あるミュージシャンは)TVには出ない」
 という風習を作ったのも、この人だ。じつは、かけだしのころ、ある歌番組に出て、某大物歌手に「なんだ、あいつは」みたいなことを言われて、ブチ切れたからだという真偽不確かな裏話を聞いたことがある。
 楽曲に関しては、70年代のある時点まで熱烈なファンの心をとらえていたようであったが、ボク個人にとっては「人間なんて」だけの人である。桑田佳祐の心にも刻まれただけあって、これだけは、いまも古びない。だって、

 ♪人間なんて ララーラーラララーラー

 やで。ラララですむねんで、人間て。
 ボクがはじめて聴いたのは、89年、転職ブームの真っ最中のCMソングとしてだった。MICAという女性シンガーが歌っていて、ボクはこっちのヴァージョンの方が好きである。シングルを買っている。パンキッシュな歌声に明るく激しいアレンジ。
 暗くフェードアウトしていくこのアルバムの吉田拓郎版は好きじゃない。ま、しかし、このヘビーさをもってる点で、吉田拓郎はなんにも考えてなさそな〈四畳半フォーク〉グループとは一線を画し、フォークがロックであった時代の一員として名を残せるのであろう。

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