ザ・ドリフターズ「誰かさんと誰かさん」
○作詞:なかにし礼
○作曲:スコットランド民謡
1970年11月発売(27万枚/翌年36位)
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♪誰かさんと誰かさんが 麦畑
で、知られるスコットランド民謡で、一般には「麦畑」というタイトルが流通してる気がする。
永遠の青春の書であるサリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』のタイトルになっているのも、じつはおなじ歌。
小説の中のエピソードで、主人公のホールデンはこの歌のことをもちだす。ライ麦畑のつかまえ人(=キャッチャー・イン・ザ・ライ)というのが、ホールデンにとっての理想の職業というか将来の姿なのだ。だけども、それを説明しようとしたら、妹のフィービーに途中でさえぎられる。あの歌のタイトルは「ライ麦畑で会えるなら」だと訂正されるのだ。かくして、少年の夢はカンちがいのたわごとと化してしまう。
それはそれとして、小説『ライ麦畑でつかまえて』は、文学にかぎらず、ロックンロールや映画など若者文化に多大な影響をあたえた。
日本だと、佐野元春の「ガラスのジェネレーション」を語るときに、必ずひきあいに出される。あれは大人vs子供という単純な話ではないと思うけれど、まあ、世の中的にはそういう10代の反抗の象徴みたいに受け取られている。
そんな小説のもとになっているのが、牧歌的なスコットランド民謡だっていうのを知ったときは、なんだかニンマリしてしまった。
一方、『ライ麦畑でつかまえて』をめぐるエピソードは、世界は必ずしもハッピーエンドではないということを伝えている。
1970年といえば、ビートルズが解散した年でもあるけれど、その10年後、NYはダコタ・ハウスのまえで、ジョン・レノンが殺された。熱狂的ファンだったと言われる犯人マーク・チャップマンがそのとき着ていたコートの内ポケットにはペーパーバック版『ライ麦畑でつかまえて』が忍ばせてあったという。