はっぴいえんど「12月の雨の日」

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 ○作詞:松本隆
 ○作曲:大滝詠一
 ○編曲:はっぴいえんど

 1971年4月発売
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 前年に出た歴史的アルバム『はっぴいえんど』からのシングル・カット。
 古代の文献が伝えるところによれば、この曲じたいがはっぴいえんど結成の象徴となった最初のオリジナル曲である。つまり、日本語のロックはこの曲からはじまったわけだ。
 はっぴいえんどが目指したロックというのは、〈革ジャンにリーゼント〉みたいなロックではない。そういう見てくれに憧れて音楽をやってる連中は当時、
「ロックは英語で歌うべきだ」
 と主張し、実行していた。
 そこに、はっぴいえんどがぶつけたのが松本隆による〈です・ます調〉の日本語詞。これがミュージシャンたちの神経を逆撫でし、音楽雑誌を舞台に大論争が巻き起こった。もっとも、当人たちの関心はそこにはない。彼らは〈自分たちの歌を歌う〉ことにこだわっただけだ。
 ボクはもともと細野晴臣のファンで、予算の都合により原点となる、はっぴいえんどは聴いたことはなかった。それがある日、FMから流れてきた曲を聴いて、どえらい新人が現れたと思い、必死で曲後の紹介を聞き取ったら、なんのことはない、はっぴいえんどの「風をあつめて」だった。
 ポップ・ミュージックとは、こういうもののことを言うのだろう。
 〈ポップ〉の語源は「ポピュラー」(大衆的)であると同時に「ポンと弾ける音」の意味もあるという。ポップ・カルチャーなども同様だ。一般に「ポップな曲調」と言うときは、明るく軽やかで、だれが聴いても楽しい気分になるような音楽をさす――たとえば、モーツァルトの「アイネクライネ・ナハト・ムジーク」のような。
 一方、ポップに似た言葉に〈キャッチー〉がある。「心がつかまれる」ということだろう。無難なイージー・リスニング(耳なじみがいい)的な意味で使われるときもあるようだが、ボクの感覚ではちょっとちがう。これはある種の違和感も込みの、なんかひっかかってくる特徴をさす言葉だと思う。理由はないけど、なぜか好きだったり、印象深かったりする。有名なところでは、ベートーベンの『運命』の出だし、あのジャジャジャジャーンだ。
 さて、ボクが言いたいのは、松本隆による〈です・ます調〉はようするに、ジャジャジャジャーンだということだ。彼らはこの点、かなり戦略的にやっている。それだけでは時代のアダ花におわる可能性もあったが、そこは音楽面がしっかりとモーツァルトしてた。
 松本隆はこのように語っている。
「だから、メインストリームはやっぱりああいうフォーク系の人たちで、はっぴいえんどはどうしても傍流っていうのかな、異端だったわけですよ。少なくとも、自分たちの意識はそういうところにあったよね」
(萩原健太『はっぴいえんど伝説』)

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